新築よりリフォームが優れている事が証明された・・・

新築よりリフォームが優れている事が証明された・・・

脱炭素時代に向けて新築よりリフォームの方が優れている事が証明されました。

6月20日のNHK朝のニュースで紹介されていましたが、新築建て替えに比べてリフォームの方が二酸化炭素の排出量が概ね75%削減できると言うような内容でした。

この問題に関して少し深堀してみました。

建設省や新築を中心に行っている業者は新築住宅の二酸化炭素の排出量を削減する事に大きな関心を持ち計画を進めています。

ところがこの問題に関して『新築とリフォームを比較した場合にはどのような事になるのか?』という視点からの調査研究はあまりされていなかったようです。

一般的に考えても「既存住宅を再利用するほうがはるかに排出削減になるのではないか」と思う方は多数おられると思いますが、この様な疑問に対して明確な答えがどこにもないまま、新築向けの議論ばかりが先行してきたように思われます。

省エネ化された新築建物によって省エネ促進される事は間違いないですが、既存のものを壊してまで新築に建て替えること自体、はたして環境に良いのかどうか、という疑問は残されたままでした。

1.実はこんなに差がある新築とリフォームの二酸化炭素排出量

ここにきて、企業や大学などいくつかのグループがこの問題の調査研究を行い、結果を発表しています。

以下の表は各項目に於けるリフォームと新築の単位床面積当たりのCo2発生量を比較した表です。

上記の表の合計値を見ると『新築89に対しリフォー22、削減率は75%』となり、新築よりリフォームの方が遥かに温暖化ガスの排出量が少ない事が分かります。

2.優位性が目立つ『構造関係資材製造、建築作業、解体処分』の3分野

上記の表の項目ごとに見てみると最も注目されるのは『構造関係資材精造』の項目です。

新築の場合に床面積1㎡当たりの温暖化ガス発生量89の内、35を占め、率にして約40%になります。

この点だけを見ても、構造をほぼ再利用するリフォームが温暖化ガス削減に優れている事が良く分かります。

又、作業に係わる温暖化ガス発生量を示す『建築作業の項目』でも5:21と新築の作業量に比べリフォームの作業量は約1/4と少なく、その結果排出ガス量の削減率も76%と高くなっています。

尚、解体処分関係は量的には1:5と構造材ほど多くは無いですが、削減比率は80%と高く廃材に関してもリフォームの有利さが示されています。

.住宅寿命は30年と云う昔からの言い伝え?新しもの好き?

私がこの業界に入った50年くらい前はお客様から、『もうすぐ30年経つから建て替えなければならない・・・』という話を良くお聞きしました。確かに当時の建物は今と比べ粗末だったかもしれませんが、未だにそんな感覚の方がいらっしゃることも確かです。

又、セカンドユースに慣れ親しみ、古いものに価値感を感じられる若い方はそうでもないですが、年配の方には新築願望がある様にも感じます。

私には今の新築住宅より40年くらい前の住宅の方が良い材料を使用し、丁寧に建てている印象が有ります。

確かに屋根の軒先が長く、趣や実用性も高い反面、リフォームの際の屋根工事には金額が上がるというマイナス面もあるのですが、新築の全予算から考えればメリットの方が大きいのではないでしょうか。

私は約35年間リフォーム専門でこの業界におりますが、ほとんどの築40年木造住宅はリフォームを行なえば今後も30年間は使用が可能だと考えています。

以下のグラフの様に海外での住宅寿命は日本よりはるかに長く、今までの日本人の住宅寿命に対する考え方はこれから世界が目指すSDGsの方向とかなりずれている事が分かります。

当社は住宅再生リフォームと云う考え方を元に木造住宅の場合、最短住宅寿命を60年間とし、住宅の維持管理をご提案しています。

.リフォームでの性能改善は新築と同じにすべきではない・・・

上記の事から、脱炭素に向けては新築に比べリフォームが効果的であることは分かりました。

しかし、私には一点心配な点が有ります。

新築に於いては断熱性能、機密性能、太陽光発電、高効率熱源機器などかなり厳しい目標を定めているようですが、これらの事は全て住宅コストに係わり住宅価格が上がることは分かりきっています。

リフォームにも最近この様な厳密な基準を持ち込む動きが見られていますが、リフォームでの行き過ぎた性能向上は逆に脱炭素に逆行する事にもなりかねません。

例えば断熱ですが、新築では建築工程に合わせて順番に作業が出来ますが、リフォームでは、全ての床・壁・天井を剥がし、断熱材を入れ、窓サッシをすべて交換するような事になります。

リフォームでは『出来上がっている部分を剥がし、目的の作業が終わったら元に戻す』という、新築には無い作業が有ります。

この様に逆工程で行うリフォーム独特の作業は新築に比べて3倍以上の手間暇が掛かります。解体でも新築では重機による解体が中心ですが、リフォームでは手解体が基本で、又、他の部分を傷めない様に特別丁寧な作業が求められ、養生もしっかり行う事になります。

更に、解体材の搬出でも細かくして多くのガラ袋に入れて車に載せる事になります。

上記項目1.のリフォームと新築の二酸化炭素排出比較表に有る仕上げ部分、作業部分、解体部分の数値が3倍ほどになると考えられます。

私の試算ではリフォームでの合計の二酸化炭素排出量は22から40程度に増加し、75%だった削減率は55%に低下してしまうと予想しています。

この点に関して私はリフォームと新築を同じ性能基準にするのではなく、努力目標を掲げて、現実に出来る方法をとるべきと考えています。

そして、国はその努力目標に準じた補助を行うべきと思います。

人口減少と空き家住宅の増加の問題を見てもこれら既存住宅の再利用は重要な解決案になるはずです。

柔軟性のある対応により空き家や中古住宅の再利用を最大限に行い、新築住宅建築の増加を抑制する事が二酸化炭素の排出量を抑える事になると私は考えています。

最後までお読み頂き有難うございます。

「我が家は新築かリフォームか」と悩まれた際には、是非アリキリリフォームへご相談ください。

ご希望に添った最適なご提案をさせて頂きます。

住宅維持管理コンサル設計事務所  住宅維持管理設計士 常田 豊

アリキリリフォーム株式会社 建築士 常田 豊



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